会社に行けなくなった人は弱いんじゃない。バックレは、見過ごされた不一致の信号です
ある朝、出社時間を過ぎても部下から欠勤の連絡がない。電話をかけても繋がらない。メールにも反応がない。
そのとき、上司として私の頭に最初に浮かんだのは、「怒り」ではなく「驚き」と「心配」でした。体調を崩したのか、事故に遭ったのか、何か身に危険なことが起きたのではないか。バックレられた側の上司の頭の中で、本当に最初に起きていることは、世間がイメージするものとはずいぶん違うことに気づいたのでした。
こんにちは、おるんです。20代で7社を経験した元ジョブホッパーで、そのうち2社では自分自身が仕事をバックレた経験があります。30代以降は管理職になり、IT系の派遣管理をしていた頃に複数の部下からバックレられた経験もあります。両側を経験した人間は、案外珍しいのかもしれません。
両側に立ったからこそ書ける結論は、ひとつです。バックレは「逃げ」でも「個人の弱さ」でもありません。バックレは、職場と本人の間にあった「不一致」を見過ごし続けた結果、ある日急に表に出てしまうシグナルです。
この記事は、いま会社に行きたくなくて朝の電車で泣きそうになっている人、もう辞めたくて辞めたくて仕方ないけれど辞表を出す気力すらない人に向けて書きます。テーマはひとつ、「バックレられた上司は、本当のところ何を考えているのか」です。
私が部下にバックレられた2つのケース(若手と中堅)を素材にして、その日の朝に上司が何を感じていたか、なぜバックレが「シグナル」なのか、そしてバックレを考えているあなたが今夜選べる選択肢は何か、まで書いていきます。
「来ないな」と気づいた朝、最初に浮かんだのは「心配」でした
上司側が朝の欠勤連絡なしに気づいた瞬間、本当に何を感じているかについて書きます。
「部下にバックレられた上司は、怒っている」というイメージは、たぶん世間で広く共有されています。映画やドラマでも、上司が怒鳴り散らすシーンが描かれがちです。
しかし、実際の現場はそうではありません。
朝、始業時間を過ぎても部下から連絡がない。出社していない。電話をかけても繋がらない。メッセージも既読がつかない。そのとき、私の頭に最初に浮かんだのは、こうした言葉でした。
- 「体調を崩したのかな」
- 「通勤途中で何かあったのか」
- 「事故に遭っていないだろうか」
驚きと心配。それが本当に最初に来る感情です。怒りはまだ、ありません。
なぜなら、真っ当な部下なら、休む必要があれば必ず連絡をしてきます。連絡がないというのは、何か「連絡できない事情」が起きていると考えるのが、上司として自然な反応だからです。
怒りが来るとしても、ずっと後です。「あ、これはもう連絡が来ないやつだ」と理解した瞬間、ようやく「業務をどうカバーしよう」「人事にどう報告しよう」という実務モードに切り替わります。
私自身は、最後まで怒りには変わりませんでした。自分にもバックレた経験がある以上、バックレた部下を責める資格は私にはない、と感じていたからです。人によっては、後からじわじわと怒りが湧いてくる場合もあると聞きますが、少なくとも私のように、最後まで怒らない上司も実在します。
これを知っておくだけで、「上司を怒らせたくないからバックレるしかない」という発想は少しゆるむはずです。あなたがバックレた後の朝、上司は怒っているのではなく、純粋に心配している可能性の方が高いのです。
中堅社員のケース ― 仕事ができる人が、突然来なくなった
私が管理職時代に経験した、中堅社員のバックレと、そこから見えたことについて書きます。
私は当時、IT技術者の正社員派遣を行う会社で管理職をしていました。直接の上司というよりは、各常駐先で働く社員の状況を見守る役割です。
ある日、その人の常駐先から「1週間以上、出社していない」と連絡が入りました。
最初に頭をよぎったのは、自宅で倒れていたりしないか、という心配です。私からしつこく携帯にかけてみると、その日のうちになんとか連絡がつき、「会社に来るのは難しい」とのこと。会社の近くのカフェで会うことになりました。
カフェで会った本人は、こう話してくれました。
- 「突然、会社に行くモチベーションが切れてしまった」
- 「会社に行こうと思うと、頭が痛くなる」
- 「病院に行ったが、精神的なものだろうと言われた」
その人は、どちらかというと仕事ができる方でした。常駐先の担当者からも評価が高く、後輩からは面倒見が良いと評判の人。それが、ある日突然、糸が切れたように動けなくなったのです。
正直、本人から話を聞いた瞬間は、驚きしかありませんでした。「えっ、あの人が?」という感覚です。
ただ同時に、「突然、仕事に対するモチベーションがなくなる」という感覚には、私自身にも覚えがありました。私もかつてはジョブホッパーで、2社では自分でバックレています。だから、本人の話を聞きながら、納得してしまった面もある。少なくとも、私にとって「理解できない」という話ではなかったのです。
その人はその後、常駐先に戻ることなく、そのまま会社も辞めて、地元に帰っていきました。
このケースを通じて、私の中に最後まで残ったのは、「どんな人にも、心に抱えている何かがある。そして、それは外からは、なかなか見えない」ということでした。
仕事ができる、評判が良い、面倒見が良い。そういう「表面的な評価」がいくら積み上がっていても、その人の中で起きている崩れには、周りはほとんど気づけません。本人ですら気づけていないことも多いのです。
若手社員のケース ― 1年以上勤めていたある日、突然
もう一つのケース、若手社員の事例について書きます。ケース2とは違う種類の引き金で起きたバックレです。
その人は若手で、1年以上勤めていましたが、ある日突然、会社に来なくなりました。私は当時、他の常駐先社員の管理職をしながら、自らも常駐社員として働いていた頃の話です。
連絡が一切取れません。本社の社員に相談して、本社の方からもいろいろ連絡を取ってもらいました。それでも全くつながらず、「家に行こうか」という話まで出てきます。
最終的には、同じ常駐先にいた別の社員から連絡を取ってもらい、ようやくつながりました。理由はケース2とは全く違うもので、通勤途中で迷惑行為に遭ったことがあり、それ以降、家から外に出られなくなっていたのです。
電話に出られなかったのも、無断欠勤を続けてしまったのも、その出来事のショックで頭が回らなくなっていたから。本人は「他の人には話してほしくない」と言っていたので、周りには事情を伏せたまま、まず会社に来てもらうところから再開しました。
ただ、そもそも精神的に不安定な部分が元々あった方でもあり、その後別の常駐先に異動しても、同じように体調不良や無断欠勤を繰り返してしまいました。そのうち会社を辞めて、フリーランスとしてやっていく道を選んだと聞いています。
このケースは、ケース2とはまったく別の種類のバックレです。中堅社員のケースは「内側で何かが崩れた」結果でしたが、若手社員のケースは「外側からの出来事」が引き金になっていました。
つまり、同じ「バックレ」と一言で呼ばれていても、その背景はまったく違うのです。
私自身も、2社でバックレた側でした
ここまで、私が上司側として経験した2つのケースを書いてきました。ただ、私自身も、若い頃には2社でバックレた側です。
詳しい経緯は別の記事でまとめていますので、ここでは深入りしません。
仕事を飛ぶとどうなる?正社員をバックレた経験者がその後のリスクやデメリットを語る
ここで書いておきたいのは、当時の自分の「主観」と、上司側で見たときの「客観」の違いです。
バックレた当時の自分は、「会社が悪い」「上司が悪い」「自分はこんな会社にもう一日も行きたくない」と思っていました。すべては会社側の問題だと信じていたのです。
しかし、上司側を経験して見えてきたのは、もっと中立的な構造でした。
会社側にも問題はあったかもしれません。ただ、自分と会社の「合わなさ」を、当時の自分自身も最後まで言語化できていなかった。だから、ある朝、糸がプツンと切れて動けなくなった。あれは、自分の心の中に積み上がっていた「不一致のシグナル」が、限界を超えて噴き出した結果だったのです。
当時はそれが分かりませんでした。だから「会社が悪い」とだけ感じていたのです。
両側を経験して見えた核心 ― バックレは「シグナル」です
上司側と本人側、両方から見て分かったバックレの本質について書きます。
中堅社員、若手社員、そして私自身。3つのバックレを並べて見ると、共通点が一つだけ見えてきます。
どのケースも、本人と職場のあいだに「不一致」があり、それが見過ごされ続けた結果、ある日表に出たということです。
中堅社員のケースは、「仕事ができる」という外面的評価と、本人の内側で起きていた疲弊との間にズレがありました。若手社員のケースは、外的な出来事のショックと、それを職場では話せない状況の間にズレが生まれていました。そして私自身のケースも、当時の自分が「この仕事は合わない」と薄々分かっていながら、それを言語化も行動化もできず、ズレが積み上がっていったのです。
つまり、バックレは「個人の弱さ」でも「逃げ癖」でもないのです。
世の中では、バックレは「無責任な行為」と語られがちです。確かに、後の人生に響くリスクはあります(これは既存記事にも書きました)。しかし、上司側を経験した私から見ると、バックレは責められるべき行為というより、互いに気づけなかった不一致が、最終的に噴き出した結果でした。
このフレームは、まずあなた自身を救うはずです。
バックレた、あるいはバックレを考えているあなたが、「自分の弱さのせい」「自分が無責任なせい」と自分を責め続けなくていい――この記事の核心はそこにあります。実際、上司の側も意外と「自分のマネジメントが悪かった」とは思っていないことも多い(少なくとも、私はそう思いませんでした)。
両側とも、不一致を見抜けなかっただけ。それは決して、あなたが極端に悪かったわけではないのです。
まとめ:バックレを考えているあなたへ、上司側からの本当の話
ここまで読んでくれたあなたが、もしいま「会社に行けない」「もうバックレるしかない」と感じているなら、両側を経験した立場から、3つだけ伝えておきたいことがあります。
1つ目:上司は最初は心配しているし、最後まで怒らない人も多い。
「上司を怒らせたくないからバックレるしかない」という発想は、現場のリアルとはずれています。上司が最初に思うのは、「体調を崩したのか」「何かあったのか」です。出社しないからといって怒るような上司というのは、世間がイメージしているほど多くはありません。
2つ目:あなたが「会社に行けない」のは、あなたが弱いせいではない。
職場と自分の間に積み上がっていた「不一致」が、ある日限界を超えただけのこと。それは、誰の責任とも言えない構造の問題です。あなたを責めないでください。
3つ目:それでも、できれば短い連絡だけは入れてほしい。
これは上司側を経験した私からのお願いです。バックレられた側は、本人の安否を本気で心配します。電話に出られなくても、メール一行だけでもいいのです。「体調を崩しています」だけで、職場の側は次のステップに進めます。
そして、自分一人で抱えるのが辛いのなら、第三者の助けを借りる選択肢があります。
大切なのは、「一人で抱え込まず、安全な撤退路を持つ」という選択肢を知っておくこと。
会社に行けない、けれど辞める手続きをする気力もない。そういう状態なら、退職代行サービスを使うのも現実的な選択肢です。
私自身がバックレた20代の頃は、退職代行というサービス自体が存在しなかった時代でした。もしあの頃にこういうサービスがあれば、無断欠勤して連絡を絶つという最悪の選択をしなくて済んだかもしれないと、いまは思います。
退職代行を使うことは、「逃げ」ではありません。あなたと会社のあいだに積み上がった「不一致」を、なるべく法的にきれいな形で解消するための、合理的な撤退戦です。
無料相談だけでもしておくと、いま自分が取れる選択肢が整理されます。明日の朝、もう一度会社に行く前に、以下から一度話を聞いてみてください。
